6.個別面談の最初と最後について
・個別面談では、最初から最後まで息が抜けないことは事実ですが、私は特に最初の面談と最後の面談に留意しています。
①最初の面談での留意点
・ラポール(信頼関係)の形成を、最重点とします。
まず、最初に「守秘義務」のことについて説明します。
「面談中に聞いた内容を、第3者に言わない」ことを説明します。
そして、「面談の内容から、自分が会社の第3者に話した方が良いと思っても話せない」ことを説明します。
どうしても、自分が話したい場合は、事前に話す言葉を確認して、承認されたらその言葉通りに話します。
その時、「言わないでくれ」と言われたら、一切話しません。
「つまり、私から事前承認の話をしない時は、第3者に話していないと信じて欲しい」旨を伝えます。
・次に、現在「スッキリしない」または「モヤモヤしている」ことがあれば、何でも話して欲しい旨を伝えます。
この面談では、仕事だけでなく、プライベートの悩みでも、どちらでも良いことを伝えます。
通常、男性では2/3以上の方が、女性でも過半数の方が、しゃべり始めます。
もちろん、初対面の私に悩みを話せない人やわずかな悩みしか話せない人も、いらっしゃいます。
・その時には、ライフライン・チャートにより、遠い過去を思い出してもらいます。
参考例として、私のライフライン・チャートを準備して見せるようにしています。
その参考例は、手書きでラフな感じのものです。
また参考例は、年齢だけではなく、山や谷の部分に、小学校・中学・就職などが書き込まれています。
その場で、本人にライフライン・チャートに記入してもらい、その後話したいことだけを語ってもらいます。
その際、山の部分を中心に、谷の部分も質問して、深く堀りさげます。
悩みが無い人でも、遠い過去から現在までの自分の人生を語ってもらうと、ラポール(信頼関係)が築けるように感じます。
・面談の最後に、上司から言われている「面談目的」を本人から確認します。
その目的に基づき、次回以降も面談することを伝えます。
そして最後に、今日の面談を振返って、どのように感じたかを聞いてみます。
その時の表情に、私は着目するようにしています。
②最後の面談での留意点
・最後の面談と言っても、2種類の場面が想定されます。
すなわち、次のステップを希望するかどうか分からない状況での前のステップの最後の場面と、もう次のステップが無い本当に最後の場面です。
ここでは、もう後が無い本当の最後の面談での留意点を説明します。
・面談を重ねていく内に、途中の面談において、本人に是非気づいてもらいたいと思うことがあります。
もちろん、途中の面談において、気づけるように自分なりに努力をしてみます。
それが、いつも自分の思い通りに行くとは限りません。
その場合、最後の面談の前に、これまでの面談を通して知っている「相手」ならば、どのような話し方や例え話ならば伝わるかを考えます。
そして、必ず何らかの話をするようにしています。
この場面では、相手の気づきを誘うよりは、自分からの助言となるので、ラポール(信頼関係)が損なわれるリスクは高まります。
しかし、最後の面談では、そのリスクよりも、本人のために少しでも有意義な面談にしようと思い、勇気を持って話すように留意しています。
そして、その結果は、面談の最後の「相手の表情」に現れてきます。
その結果が、自分の思い通りでなくても悔いはありません。
実践しないことよりも、遥かに心残りがないと考えています。
・そして、最後の面談では、必ず「最後の面談に当たって」という資料を手渡すようにしています。
それには、今日の面談が企業からの依頼の最後になること、しかし今後深い悩みが生じた時には、いつでも相談にのる旨が書かれています。
また、その資料には、個人の依頼にも応じることと、連絡先や個人面談に応じる条件が記載されています。
つまり、縁あって面談を行って来たので、今後もいつでも相談して欲しいというメッセージを伝えるためです。
・また、今後の人生に少しでも役に立つかもしれないものとして、以下の資料も手渡すことにしています。
それは、「道のうた」森川りう 著 という詩です。
内省しながら生きてきた「森川りう」様の遺留品から、この「道のうた」という詩が見つかったものです。
この詩は、宮沢賢治の「雨ニモ負けず」の詩の由来に似ていますが、詩の内容はより深い人生訓になっています。
自分の面談の中では、ほとんど伝えることが出来なかった内容です。
本人の今後の人生に役に立つことを願いながら手渡しています。
・さらにこれからは、以下の資料も追加して手渡そうと考えています。
それは、「ストレスを溜めない生き方とは?」というものです。
これは、「怒り」や「不安」の感情に左右されないようにするには、どうすれば良いかを考えて自分なりに実践して来た方法です。
「道のうた」の詩だけでは、分かりづらいと感じる人がいるような気がして、それを補完するために作成しました。
これもまた、本人の今後の人生に役に立つことを願いながら手渡していこうと思っています。